ブルガリアのクリスマスイヴ料理

クリスマスイヴがやってきました。以前にもお話したように、ブルガリアの伝統的なクリスマスイヴには、肉、魚、卵、乳製品などの動物性のものは一切食べず、植物性のもののみを口にします。

クリスマスイヴにどのように食事するかによって、次の年がどのような1年になるかが決まります。食卓には必ず7品以上の奇数の料理が用意され、更に蜂蜜、クルミ、タマネギ、にんにくを食卓に並べます。これらには魔よけの意味があるそうです。そして現在では難しいのですが、クリスマスイヴの料理には自分たちの畑で収穫した作物が使われます。

食事の際にはすべての料理が食卓に並べられ、家族全員同時に席に着き、食事が終わるまで一家の主人以外は席を立つことができません。食事が終われば家族一同一緒に立ち上がります。これは次の年に小麦がいっせいに伸びてよい小麦を収穫できるように、そして飼っている雌鶏が動いたりせずに卵をしっかり温めて雛がかえるように縁起を担いで行ったことのようです。

クリスマスイヴ用のパンにはイーストを使うことができません。パンは小麦粉、塩、植物性油とベーキングソーダで作ったとてもシンプルなもので、鳥や十字架などで飾り付けをします。パンの中には銀のコインがひとつ入っていて、コインが入った部分を取ることができた人は次の年幸運な1年を過ごすことができます。

そしてクリスマスイヴによく食べられる白いんげん豆を使ったスープ 「ノンオイルのボップチョルバ(白いんげん豆のスープ)」。こちらもとてもシンプルに、白いんげん豆とみじん切りにしたタマネギに塩、セイボリー、ミントで味付けしただけのスープです。自分たちの畑で収穫した豆の味を確かめるのにぴったりの料理かもしれません。

他にクリスマスによく食べられる料理といえば、リーキ(リーク、ポロ葱)の入ったバニツァ(小麦粉、水、油、塩、酢で作った薄い生地を使ったパイ)やサワーキャベツの入ったバニツァ、そしてかぼちゃの入った甘いバニツァ 「ティクヴェニック」があります。普通バニツァを作るときには生地に溶かしバターを塗りますが、クリスマスイヴにはバターの代わりに植物性油を使います。

今回作った野菜料理で特に気に入った一品は「ピーマンのマッシュルームライス詰め」。マッシュルームとタマネギの入ったご飯をピーマンに詰めて蒸し煮にしたもので、野菜だけでもこんなにおいしいものができるのだと実感しました。たくさんの雌鶏が生まれてくるのを願ってたくさんのお米が詰まったこの料理が作られます。同じように、トマトなどの野菜やハーブで味付けしたご飯をサワーキャベツで巻いて蒸し煮にした「サワーキャベツのサルミ」もクリスマスイヴによく食べられる料理です。

「ヴァレノ ジト(茹でた小麦)」という茹でた小麦を使った甘いデザートのようなものもよく食べられます。これを作るのに小麦がいるとうちの旦那さんに言われたときには、どういう小麦が必要なのかがわからず、ブルグル(挽き割り小麦)のことかと思ったのですが、ブルガリア語でこの小麦を『gruhano zhito(グルハノ ジト)』といい、これを直訳するとcracked wheat、つまり砕いた小麦のことだったのです。

日本ではこの小麦が手に入りません。それに近そうな食べ物、ブルグルもトルコやギリシャの食材を扱う通販で買うことができるようですが、今回はちょうど家にあったクスクスを使って作ってみました。

『グルハノ ジト(砕いた小麦)』を使って作る場合は、小麦を一晩水に浸けたり1時間煮たり数時間蒸らしたりと、結構面倒で時間がかかりますが、クスクスを使うとあっという間に出来てしまいました。クスクスを使って作った「ヴァレノ ジト(茹でた小麦)」の味のほうは本物と変わらないようで、小麦とクスクスの粒の大きさが違うこともあってか、食感だけが少し違ったようです。

最初に茹でた小麦を食べると聞いたときはお粥のようなものを想像していたのですが、砂糖、蜂蜜、くるみ、粉砂糖を加えて出来上がったものは、ちょっと和菓子にも似たような面白い味で病みつきになりそうなものでした。クリスマスイヴだけでなく、夏に冷たく冷やしてデザートとしても食べるようです。今回はシナモンで十字架を描いてみました。

その他、「オシャフ」というドライフルーツを柔らかく煮て、砂糖や蜂蜜で甘く味付けしたフルーツポンチのドライフルーツ版のようなものもクリスマスイヴによく食べるようです。

今年はブルガリアの伝統的クリスマスイヴの食事をしようと張り切っていた我が家ですが、朝からコーヒーに牛乳を入れて飲んでしまうわ、作ろうと思っていた料理の品数は時間が間に合わずに数品減ってしまうわで、来年一年がどんな年になるのかすでに目に見えてしまったかのようでした。

(クリスマスイヴ料理のレシピは後日公開します!!!)

6件のコメント

  1. タヌ子:

    フランスではフェーブが入ったGalette des roisを1月6日のエピファニーにいただきます。
    そしてギリシャでは復活祭にブリオッシュの中にコインが入ったお菓子(パン)を食べますね。
    ブルガリアではクリスマスに食べるものなんですね。
    これはitsukoさん手作りのパンなんですよね?
    飾りが綺麗で食べてしまうのが勿体無いくらい。
    クスクスで作ったお菓子、ギリシャのハルヴァみたいな感じなのかな?

  2. yukacan:

    興味深いお話をどうもありがとうございました。こういうお話大好き!
    よくご存知ですね。旦那様が教えてくれるのですか?

  3. ゆこ:

    それぞれに意味があるのですね。面白い。キリスト由来なんですか?
    日本のおせちみもいろいろ意味あるなぁ~と、どこか似てるなと思いつつ。
    食文化って根付いていくものですから人々が色んな事から学んだりするんでしょうね。文化のお話楽しみにしています!

  4. itsuko:

    タヌ子さん、

    私が作ったパンですが、こういう飾り付けをしたのは初めてでした。
    如何に手先が不器用かわかりました。

    ブルガリアにもハルヴァというお菓子があります。ギリシャのものとは違うかもしれませんが、
    私ヶ知っているごまの入ったハルヴァは、今回の茹でた小麦と違ってしゃりしゃりしてすごく
    甘いのでちょっと違うかもしれません。
    今度レシピを載せるので似ているかどうかまた教えてくださいね。

  5. itsuko:

    yukacan、

    こういう話はもちろん夫から聞くのですが、もっと詳しく知るために人に聞いたりネットで調べてもらったりもします。
    ブルガリアでは共産時代には宗教は否定されていたので、クリスマスより新年を祝うようになっていたようです。
    ブルガリアの伝統的なクリスマスがちゃんと受け継がれて行ってほしいです。

  6. itsuko:

    ゆこさん、

    初めまして。

    肉などの動物性食品を食べないのはキリスト教由来のようです。
    今それを守っている人は少ないようですね。その他は地元の風習でしょうか?

    私も日本のおせち料理のことを思い出しました。世界にはいろんな食べ物や料理がありますが
    意味があって食べているのかもしれませんよね。
    ブルガリアの文化、習慣をいろいろ知っていくと、他の国や地域とも関係していることに
    気が付いて面白いです。

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